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2012年2月 4日 (土曜日)

自転車買換記

 ことしのはじめに自転車を買い換えた。
 この10年あまりずっと、息子が買ってくれた折りたたみ自転車に乗ってきた。最初のころは折りたたんで玄関に置いて、乗るときにその都度外に持って下りて組み立てたのだが、しかしこれでは乗るのに時間がかかるし、狭い玄関がさらに狭くなる。
 しかたがないので自転車置き場に1台分場所を借り増して、組み立てたまま外に置くことにした。乗りたいときにすぐ乗れる。便利になった。しかしものごとは良いことの裏に悪いことがある。

 自転車置き場は、屋根はあるものの吹きさらしなので、そこに置くようになってからたちまち汚れてしまい、さらに少しずつさびが広がった。さびやすい素材なのかもしれないが、何年も屋外に置きっぱなしだったのだし、なにしろ手入れをまったくしなかったのだから、これもまたしかたがないか。
 だが、見かけは悪くなっても乗るのに困るわけではなかった。だからなおさら、乗りたいときに気ままに乗るだけで、あとはほったらかしにしてきた。

 それが、ここ何年かの間に見かけだけでなく、少しずつ調子が悪くなってきていた。ハンドルの中央から下に伸びる棒をハンドルポストというらしいが、その途中にある折りたたみ部分がゆるんで、ハンドルが少しぐらぐらする。ブレーキが利きにくい。ギヤチェンジがスムースでない。手入れのずぼらが安全までおびやかし始めた。

 ところでこの何カ月か、アキレス腱がなかなか良くならなくて歩ける距離が極端に短くなった。かわりに自転車に乗る機会が増えている。だから自転車の不安全を放置するわけにはいかない。
 そろそろ寿命なのか、自転車屋で最小限の調整をしてもらうか、全面的なオーバーホールが必要か、それであと何年ぐらい乗れるのか。
 そもそも私はあと何年自転車に乗ることができるのだろうか。2、3年よりはずっと長く乗れるだろう。乗れる間は乗りたい。そうなると、いずれ買い換えなければならない。そして、それが私の生涯の最後の自転車だ。私は物持ちがいいから、今新しく自転車を買ってもその1台を乗りとおすことができるだろう。ならば今買換えるほうがいい。

 というようなことを去年の12月にあわただしく夫婦で話して、急なことながら買い換えることに決まった。決めたのは、我が家の財務管理者、兼健康管理者、兼安全管理者たる妻である。
 妻が設定した予算は3万円。私の切なる希望は多段変速機つきであること。7段変速の折りたたみ自転車に10年以上乗ってその便利さの恩恵を受けてきたので、体力が衰えていくこの先、もはやこの機能のない自転車は考慮の外だ。

 暮も押し詰まった12月30日、以前妻用の自転車を買った店に行って、予算の範囲内で自転車をひとつ店主に選んでもらった。6段変速つき。知らないメーカーのものだった。それにしようかと決めかけて、やはり少し躊躇した。最近よく売れているメーカーだと店主は言ったが、決めるのは保留した。カタログをもらって帰った。
 予算の範囲内では、6段変速機を優先するならば知らないメーカーのもの、作りのしっかりしているB社製をとるならば6段変速機のないもの。
 思案の末、私の小遣いから6段変速機分として(つらいことだが)5千円弱を足して、B社の6段変速車にした。私は6段変速に満足し、妻はB社品であることに満足。彼女は他社車を乗りつぶした後B社車に買い換えてその品質に感心しているのだ。
 翌31日にもう一度自転車屋に行って注文した。

 品物が自転車屋に来たのは、正月休みを挟んだので1月の第2週になってから、引き取りに行ったのは月半ば15日の日曜日だった。
 ちょっとそのへんを試走してみるとハンドルがやたらと高い位置にある。なにやら猿回しの猿が自転車に乗っている姿を思い出す。上半身が直立して体重が全部尻にかかってくる。今までの自転車はやや前傾姿勢だったからはなはだ乗りにくい。うんと下げてもらった。サドルは、かかとがだいぶ高く浮くが、両足を地面につけて安定的に止まることができる高さ。前のときはさらにもう少し高くて止まるときによろけることがあったが、歳相応に安全を優先すればそんなものだろう。

 買ったのはシティ車、俗称ママチャリに属するものだが、メーカーは通勤車としている。その中で一番低価格のもの。前かごはかばんが入る大きさで、後ろの荷台はない。この前かごが便利だ。
 ハンドルを低めにして、上体がやや前傾してハンドルにも体重の一部を乗せて走り、6段ながら多段変速機つきだから、スポーツサイクル風味のシティサイクル、というところか。車輪径27インチ。重量16.9kg。
 
 乗ってみると、当然ながらしっかりしている。どこにもガタがないのがなにやら不思議な感じがした。前かごがあるせいか、あるいはハンドルにも体重をかけているからかもしれないが、ハンドルが重く、低速のときにややふらつきやすい。前後輪間が長い分折りたたみ自転車より小回りが利きにくい。だから、入れ子になった柵をS字にすり抜けるときなどは折りたたみ自転車のほうが楽だった。だが直進のときは走りやすい。

 行動範囲が広がった。歩かなくなって減っていた運動量が増えた。歩いていたころに戻ったかどうかは分からないが、アキレス腱に負担がかからないところがいい。
 歩くのと自転車に乗るのとでは使う筋肉がずいぶん違う。歩くときは伸ばした両足を前後に動かすだけだが、自転車に乗ると腰もひざも深く曲げて力を入れるし、上半身も上肢の筋肉を使うのはもちろん、背中の筋肉も使うようだ。ただ、心肺能力を高めるためには歩くほうがいいのだろう。自転車ではごくゆるい下り傾斜でも文字どおり自転車みずからが自転して走るから、その間は運動にならない。

 ところで折りたたみ自転車。折りたたんで玄関に置いていたころはときどき車に積んで、出かけた先で乗っていたのだが、組み立てたまま自転車置き場に置くようになってからそういう使い方は自然消滅した。
 今回の買換えで処分するつもりでいたが、もう一度そのころやったように車と組み合わせて使いたくなった。
 処分するのをやめて、折りたたんで車のトランクに押し込んだ。積みっぱなしでいいから楽だ。たまに出かけた先で取り出して乗っている。
 そうなるとこれの安全対策が必要だ。どれぐらい対策してどれぐらい乗り続けるか、解消したはずの悩みがまた復活してきた。真夏にはどうしようという新しい悩みもできた。車の中の高温に自転車は耐えられるのか。

 悩みながらも両方の自転車を使ってあちこち走ってみようと張り切っている。なんとなく若返ったような気分である。

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